文書作成日:2025/08/26
先日、厚生労働省から長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果(2024年度)が公表されました。この資料は、どのような観点から労働基準監督署の監督指導が行われるかを知ることができるものであるため、そのポイントについて見ていきましょう。
[1]法違反の状況
今回の監督指導の結果は、2024年4月から2025年3月までに、長時間労働が疑われる事業所に対し、労働基準監督署が行った監督指導の実施結果を取りまとめたものです。
監督指導が実施された事業場のうち、労働基準法等の法令違反があった割合は、81.1%で、主な違反としては、「違法な時間外労働があったもの」が42.4%、「賃金不払残業があったもの」が8.0%、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が21.5%でした。この過重労働による健康障害防止措置が未実施については、以下の違反の件数等が計上されています。いずれも法違反が起きやすいポイントとなりますので、自社の対応に問題がないか確認しておくとよいでしょう。
- 衛生委員会を設置していないもの等〔労働安全衛生法第18条違反〕
- 健康診断を行っていないもの〔労働安全衛生法第66条違反〕
- 1ヶ月当たり80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者から、医師による面接指導の申出があったにもかかわらず、面接指導を実施していないもの〔労働安全衛生法第66条の8違反〕
- 客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していないもの〔労働安全衛生法第66条の8の3違反〕
[2]企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例
公表された監督指導結果の中で、監督指導事例と、それに対し企業が実施した長時間労働削減のための自主的な取組事例が紹介されています。例えば、労働者数60人の建設事業者で、情報通信技術を利用し、インターネット上で情報共有を行うことのできるシステムである「ASP(Application
Service Provider)」を活用したり、本社(バックオフィス)の人員を含めてタスクシェアを実施したりすることで、時間外労働が多かった部署の時間数が減少されたり、年次有給休暇の平均取得日数が増えたり等の効果が紹介されています。
厚生労働省は今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行い、11月には「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うとしています。長時間労働となっている企業は、他社の長時間労働削減のための自主的な取組事例等も参考にしながら、取組みを進める必要があります。
■参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表します」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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